今回は頻尿の原因の一つである【膀胱炎】についてお話いたします。
膀胱炎の症状
膀胱に細菌が感染し、炎症を起こしている状態のことを言います。
男性よりも尿道が短い女性の方が膀胱炎になりやすく、20歳〜40歳女性の25%〜35%の方が経験してる病気になります。
冬に多く見られるのも特徴とされています。
症状ととしては
- 残尿感
- 尿の回数が増える(頻尿)
- 排尿する際の痛み(排尿痛)
- 下腹部痛
- 尿が濁る
- 尿が臭う
詳しく説明すると、男性の尿道は約20cm〜25cm,女性は約3cm〜5cmと短く、肛門や膣が尿道に近いため、細菌(大腸菌やブドウ球菌など)が侵入しやすくなっています。
比べて男性は尿道が長いので、細菌が侵入してきても排尿により洗い出されてしまいます。
そのため男性よりも女性の方が膀胱炎になる確率が高くなっています。
膀胱炎の症状の違い
膀胱炎には大きく分けて4つの種類があります。
「間質性膀胱炎」
膀胱炎の症状と似ていますが、こちらは細菌感染のないものになります。
排尿するときの痛みよりも、尿を我慢している時の痛みの方が大きいのがこの病気の特徴になります。
膀胱炎の検査では異常がないと診断されたのに、頻尿が続いたり、膀胱の痛みが続く時に考えられる病気です。
場合によっては、強い痛みにより日常生活に支障をきたす恐れがあります。
参考:間質性膀胱炎 – 泌尿器科の疾患と治療:東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 泌尿器科学教室
「急性膀胱炎」
主に細菌感染に起こるもので初期の段階、または軽症であれば残尿感、トイレが近くなるといった症状がでます。排尿後すっきりしない状態が続きます。
進行が進み炎症が強くると尿が濁り(細菌と闘うため、白血球が血管から出てきた証拠)、血尿が出たり、排尿の時の痛みのみならず、腰痛を伴う恐れがあります。
また、すぐに尿意を感じ、何度もトイレへ逆戻りせざるおえないため精神的にも辛い症状になります。
参考:急性膀胱炎とはどんな病気か【表付】|症状や原因・治療 – gooヘルスケア
「慢性膀胱炎」
急性膀胱炎と同じ様な症状がでるものの、その症状が繰り返されたり、持続することにより膀胱が長期的に炎症をおこし、完全に治らない状態のことを慢性膀胱炎と言います。
ただ、急性膀胱炎よりも症状が緩やかです。
持続的に症状が続いているためほとんど自覚症状がないケースもみられます。
参考:【医師監修】慢性膀胱炎の症状と原因 | ヘルスケア大学
「腎盂腎炎(じんうじんえん)」
腰のあたりに左右対称にある臓器(腎臓)は通常血液をろ過し、老廃物や塩分を尿として体の外へ追い出しています。
この腎臓の中にある腎盂や腎杯などに尿管をさかのぼった細菌が侵入し、炎症を起こしている状態が腎盂腎炎になります。
高熱、食欲不振、嘔吐など風邪に似た症状や背中を叩くと腎盂腎炎になっている方だけ腰がひどく痛むといった症状がでます。
参考:急性腎盂腎炎<腎臓と尿路の病気>とはどんな病気か|症状や原因・治療 – gooヘルスケア
「出血性膀胱炎」
炎症を起こした膀胱から出血し、排尿時に血が混ざる症状のことを言います。ほとんどが感染力の強いアデノウイルスが原因とされ、小児が感染しやすい病気です。
また、癌患者へのイホスファミドやシクロホスファミドの投与、放射線治療の合併症での発症率も高いです。
血尿は見た目で少し色がついているものから、真っ赤に色つく場合と様々です。
排尿時の痛み、微熱、血尿がある場合は出血性膀胱の可能性が高いです。
参考:【医師監修】出血性膀胱炎の症状と原因 | ヘルスケア大学
膀胱炎の原因
急性膀胱炎の場合は細菌感染が原因で膀胱が炎症します。
細菌の半分以上(70〜90%)は大腸菌ですが、他にもブドウ球菌属、肺炎桿菌属、腸球菌属、プロテウスなどの細菌があります。
▷男女別膀胱炎の原因
女性の場合
尿道が短いため細菌が侵入し、増殖を抑えきれず、炎症を起こしやすいと言われています。
妊娠や生理中はおりものや血液で、外陰部が不衛生になることで細菌が膀胱にいき、炎症を起こしてしまいます。
こまめにナプキンを取り替え、細菌が尿道に侵入するのを防ぎましょう。
また、更年期障害により、女性ホルモンが減少し、膣炎を起こしやすくすなり、そこから細菌が繁殖し膀胱炎になることがあります。
男性の場合
女性よりも尿道は長く細菌が尿道を伝って膀胱に達する前に、排尿で洗い流されてしまいますが、前立腺の位置が大腸菌が付着しやすい位置にあるため、炎症を起こす恐れがあります。
▷細菌が侵入しやすい状況
ストレス
強いストレスも免疫力を下げるので、菌への抵抗力が落ち、膀胱炎を発症させてしまう可能性があります。
トイレの我慢
働いている方などに多く見られます。
排尿は、尿道に入った細菌を洗い流す役割があります。
長時間トイレを我慢してしまうことにより、尿道にある細菌がどんどん繁殖してしまい、膀胱に達する可能性があるため、こまめにトイレへ行くよう心がけましょう。
風邪や過労などによる抵抗力の低下
免疫力が下がることによる、菌への抵抗力の低下が原因で膀胱炎を発症してしまいます。
抵抗力を落とさないためにも過度なダイエットや睡眠不足を避け、バランスの良い食事や適度な運動など生活習慣整えましょう。
冷え
女性に多く見られる冷え性。
特に下半身の冷えは排尿に関わる臓器や膀胱の筋肉の動きが鈍くなってしまいます。
そのためうまく排尿ができず膀胱炎になってしまいます。
温かい飲み物を飲み、利尿作用をうながし体を温めることも膀胱炎の予防につながります。
性行為
性行為後に女性が膀胱炎になる確率高いと言われています。
性行為の際に腟周辺の粘膜や尿道が傷つき、細菌に感染しやすいことが原因とされています。
膀胱炎の10〜15%は一般検査で通常の細菌が証明されないこともあり、クラミジア、ウレアプラズマなどの関与も考えられています。
性行為の前後にシャワーなどで外陰部を清潔に保ったり、トイレへ行き排尿することにより予防につながります。
薬で治す膀胱炎
膀胱炎の多くは「抗生物質」を服用することにより、短期間で治療することができます。
急性膀胱炎の場合、服用後1〜2日で症状は落ち着き、3割の方は2週間以内には治っているというケースが多いです。
また、薬を服用しなくても26%の方は2週間以内に自然治療で症状が緩和されれいます。
その際、水分(※)を多めに取り、排尿を促したり、下腹部を温めながら安静に過ごす、排尿時に痛みを伴う原因がある刺激の強い食事は避けることがポイントとなってきます。
(※)利尿作用があるからといってアルコールは禁物です。炎症を悪化させる恐れがあります。また、冷たい飲み物は体を冷やすため、なるべく温かいものを選びましょう。
日本で膀胱炎に処方される抗生物質
新経口セフェム系薬、ニューキノロン系薬があります。
参考:【セフェム系抗菌薬(抗生物質)】膀胱炎の治療法|治療ノート
主な原因菌の大腸菌に効果があります。
ただし、ニューキノロン系薬は妊娠中、授乳中は使用することができません。
ペニシリン系薬や第一世代セフェム系薬による短期治療は、腟や腸内に残存した大腸菌によって早期の再感染が起こることがあるので注意が必要です。
欧米ではST合剤やサルファ剤などの薬剤が推奨されていますが、日本では使用制限がありこれらの薬剤は第二選択となっています。
参考:ST合剤:バクタ
細菌に対する処方があっていないと膀胱炎が慢性する可能背がでてくるため、あまりに症状がひどい場合は泌尿器科で受診することをおすすめします。
膀胱炎による血尿
膀胱炎は、血尿が出る病気で多いとされています。
膀胱内での炎症により血が出ている状態なので軽度の膀胱炎とは言えません。
膀胱は袋の形をしていて、外側は排尿菌と呼ばれる筋肉に覆われ、内側は水を通さないよう粘膜で守られています。
膀胱の内側で細菌感染による炎症をおこし、粘膜かが傷つくことにより出血し、排尿時に血液が混ざり血尿として体外へ出ます。
人によって出血は様々で、肉眼できないくらいの少量の方もいれば、紙にうっすらピンク色がにじむ方、真っ赤になるくらい出血する方もいます。
後者の場合は尿を作る腎臓や尿を溜めておく膀胱、尿の通り道の尿道のいずれかの泌尿器が重度の状態になってると言えるでしょう。
膀胱炎の血尿の際、排尿の初めや終わりに血が混ざっています。
はじめから最後まで血尿がみられ流場合には膀胱炎が進行しすぎて腎炎、尿路結石い鳴っている可能背が十分に高いです。
また、血の色がピンクや赤の場合は膀胱炎による血尿、茶色い血の場合は腎臓から出血した恐れがあります。
膀胱炎による血尿の場合、悪化すると腎臓や他の臓器などへ感染症を起こす可能性があります。
血尿は体からのサインです。必ず病院を受診しましょう。
病院で受診・膀胱炎の検査方法
▶︎膀胱炎になったら何科を受診すればいいの?
膀胱炎の症状がある方は
- 婦人科
- 内科
- 泌尿器科
のいずれ科がある病院で受診しましょう。
上記の中でも泌尿器科は、膀胱炎だけでなく頻尿に関する悩み、慢性膀胱炎、出血性膀胱炎など他の病気の可能性も詳しく専門的に見てもらえるため、心配な方は泌尿器科へいくことをお勧めします。
▶︎膀胱炎の検査方法
①問診
いつから症状がでているか、排尿時にどのような症状があるかなどを聞かれます。
不安なことはすべて伝えておきましょう。
婦人科などは妊娠や性行為によるものなども考えうるため、月経などについて聞かれる可能性もあります。
②尿検査
膀胱炎の疑いがあると尿検査へ進みます。
尿からは膀胱、腎臓の状態を知ることができます。
また、膀胱炎の原因となる細菌の種類の特定し、効き目のある抗生物質を調べたりします。
トイレで紙コップなどに途中の尿を取ります。
まれに、尿道から管を入れて尿を採取する病院もあるので心配なら事前に問い合わせてみると良いかもしれません。
※泌尿器科によっては問診よりも待ち時間を利用して尿検査が先に行われる場合があります。
③結果報告
混み具合にもよりますがだいたい30分程度で尿検査の結果がでます。
尿の検査で一定以上の尿の中の白血球、尿の中の細菌が見つかれば「急性膀胱炎」と診断されます。
▷膀胱炎っぽいのに検査結果で異常がないと言われた
検査結果で異常がない。と診断されたけど、膀胱炎っぽい症状や頻尿がある場合「間質性膀胱炎」の疑いがあります。
過活動膀胱との区別がつきにくい症状です。
過活動膀胱の場合、排尿後はスッキリします。
間質性膀胱炎の場合、排尿後もすっきりしません。
間質性膀胱炎は痛みを伴う場合と、伴わない場合があります。
▶︎痛みを伴う
排尿時よりも膀胱に尿が溜まっている状態に痛みを感じます。
日常生活が困難になる程、下腹部が強い痛みを起こすこともあります。
▶︎痛みを伴わない
トイレに行ってもすぐに行きたくなる頻尿が主な症状です。
▷間質性膀胱炎の原因
間質性膀胱炎の場合、細菌が原因で起こる膀胱炎ではないため、尿は綺麗で細菌は検出されません。
明確な原因は分かっていませんが、膀胱炎の粘膜に異常が起こり、炎症が深部に波及するために起こっている状態というのが最も有力です。
また、膀胱が過度に膨らんでしまっていることも原因とされています。
▷間質性膀胱炎の治療
細菌が原因ではないめ、抗生物質を使用しても意味がありません。
さらに、保険のきく治療法がないことから、泌尿器科で受診しても十分に対応してもらえないケースがあります。
完治は難しいものの、近年抗アレルギー薬などの可能性がある治療法も出てきています。
長期にわたる治療になる可能性があるため、信頼できる専門医を探すか、生活習慣の中で改善を目指すのも一つの手です。
膀胱炎の治療後の予防
膀胱炎は日々の生活習慣の中で予防することがでいます。
長時間トイレを我慢しすぎない
尿意を感じた時にすぐにトイレへ行ける環境づくり、意識をしましょう。
排尿は尿どの細菌を洗い流します。
陰部を清潔に保つ
女性の場合、ナプキンやおりものシートはこまめに取り替えるようにしましょう。菌が繁殖してしまいます。
また、外部からの雑菌の侵入を防いでくれるいい菌を洗い流してしまう可能性があるためビデの使いすぎやシャワー時にゴシゴシ洗いすぎることは逆効果となるので注意しましょう。
排尿、排便の際は前から後ろに向けて拭くことにより、大腸菌などの細菌の侵入予防になります。
水分を多めにとる
キンキンに冷えたものではなく、常温、または温かいものを飲むようにしましょう。
水分をたくさんとり、排尿を促します。
トイレを1日に3回程度しか行かない方は要注意です。
ただし、利尿作用があるからといってアルコールをたくさんとることは免疫力が低下するので避けましょう
下半身を冷やさないようにする
下半身の冷えは膀胱の筋肉や血流の働きを弱めてしまいます。
体を外側、内側から温め、臓器に負担をかけないようにしましょう。
体調管理
ストレスや風邪、疲れなどは免疫力が下がってしまうため、外部からの菌へ抵抗できなくなってしまいます。
細菌感染を防ぐためにも強い体作り、リラクッスできる環境づくりを心がけましょう。
性行為
性行為時に尿道から菌が入る恐れがあります。
尿道にあるうちに排尿で菌を流すか、シャワーをあび、清潔に保ちましょう。
食生活
バランスの良い食生活をすることにより、体の免疫力も上がります。
また、欧米ではクランベリージュースが膀胱炎の予防に良いと言われています。
膀胱炎の原因・症状・薬まとめ
- 膀胱炎は尿道から膀胱に細菌が侵入し、炎症を起こすことによっておきる
- 男性よりも尿道が短い女性に多い
- 排尿時、我慢している時に痛みを感じる
- 急性膀胱炎、慢性膀胱炎、出血性膀胱炎、間質性膀胱炎の4種類に分けることができる
- 間質性膀胱の場合、完治が難しい
- 血尿は体からのサイン
- 軽度の膀胱炎は抗生物質を服用することにより治るが間質性膀胱は抗生物質が効かない
- 生活習慣で予防することができる
膀胱炎については以上となりますが、頻尿の原因は膀胱炎以外にも様々です。
頻尿の様々な原因 |